多くの国では重要な契約書に署名が一般的ですが、日本では印鑑が使われます。最近ではクラウドサインも普及していますが、特に行政手続きでは印鑑がないと不便なことが多いです。そのため外資系企業も日本進出時には印鑑を作成することをお勧めします。この記事では法人印の種類や印鑑登録方法など、印鑑に関する知識を解説します。
印鑑の種類
法人で使用する印鑑は、会社設立の際に必須の印鑑と、あると便利な印鑑があります。
1. 会社設立に不可欠の印鑑 -代表印(実印)の重要性
種類:代表印
利用シーン:契約書、官公庁への届け出など
代表印とは、会社を代表する人が会社の意思表示を対外的に証明する際に使用する印鑑です。通常、会社設立手続き時に作成し、ほとんどの場合法務局に登記されます。代表者印を登録すると、法的な拘束力を持つ「実印」とも呼ばれます。
会社実印は以下のような重要な契約や役所への届出や登記などの重要なシーンで必ず用いられます。
代表者や役員の変更時、定款に既定のある臨時総会の議事録への押印
登記変更申請書への押印
官公庁への届け出書類(許認可申請や更新など)への押印(専門家に委任する場合は委任状に代表印が必要)
会社として締結する契約書への押印
新株発行など会社として法律行為を行う際
会社が実在していることの証明(印鑑証明書の提出も求められるため法務局へ印鑑登録を済ませておくことが必須です)。
印鑑登録すると印鑑カードが発行され、印鑑証明書の入手が可能となります。印鑑カードの発行には印鑑カード交付申請書を法務局に提出して下さい。
印鑑証明書について
日本では、会社にとって重要な法律行為の実行や公に提出する書類の作成時などに、その印鑑が偽物ではなく正式なものであることを証明するため、印鑑証明書を添付する実務慣行があります。サインの場合、代表者が契約書等にその場でサインをすれば、サインの真偽が問題となることはありません。しかし、印鑑は街のはんこ屋さんやAmazonで簡単に購入できるため、それが会社の本物の印鑑であるかどうかを簡単に判断することができません。そこで、印鑑証明書を添付することで、押印が真正であることを証明します。
2. 銀行取引と文書管理に有効な印鑑 -銀行印と角印(社判)
種類:銀行印
銀行口座の開設時に必要となります。なかには、口座開設の際に銀行印を必要としない銀行や、銀行印の代わりに代表者印の使用を認めている銀行もありますが、ほとんどの場合銀行印が必要です。
銀行印は金融機関への登録に使うため、実印と同じくらい重要です。
印鑑店では、3本セット(代表印、銀行印、角印)を勧められることがあります。銀行印として使われる丸印は、外枠に社名、内枠に「銀行印」と書かれているのが一般的です。
種類:角印(社判)
角印とは領収書や見積書を発行する際に用いられる認印です。角型であることが多く、「社判」とも呼ばれます。
角印は文書の証明力を担保するために使用されますが、角印が押されていない請求書や領収書にも法的効力があります。そのため角印を作成しない法人もあります。
代表印(実印)の登録手順とその重要性
1. 登録する印鑑を用意する
印鑑は専門の印鑑屋さんに作成を依頼するのが一般的です。多くの場合、上述の3本のセットを推奨されます。
代表印は商業登記規則により直径1cm以上3㎝未満のサイズと定められていますが、印鑑の形状・刻印内容に制限はありません。一般的には18mmもしくは21mmサイズの丸型が定番で、二重の円に外枠には法人名や屋号、内枠には「代表取締役印」「代表者印」等の役職名が入ります。代表印に彫る社名には規定がなく、英語やアラビア数字などの表記はもちろん、略称などを使用することもできます。
2. 印鑑届書を法務局に提出する
印鑑の登録は、代表者が「印鑑届出書」を法務局へ提出することによって行われます。登録する代表印以外にも代表者本人の実印の捺印、代表者本人の実印の印鑑証明書が必要です。
代表者が印鑑を持っていない場合は、印鑑届出書への代表者のサインで代用できます。代表者の国籍がある国の公証人役場でサイン証明書を取得し、それを印鑑証明書の代わりに提出します。
司法書士などの代理人が印鑑届出書の提出を行うことも可能で、その場合には委任状の提出が必要です。
(参考)法務局への印鑑届出は義務ではなくなった
法務局への印鑑届出は、従来会社設立時に必須の手続きでしたが、2021年2月15日より、会社設立の登記申請をオンラインでした場合、印鑑届出書の提出は任意となりました。
しかし、多くの企業や金融機関では、未だ実印と印鑑証明書の提出を求めてくることが多いため、従来通り印鑑届出を行うことをおすすめします。
この記事では、日本で法人が使用する印鑑について解説しました。代表印(実印)の重要性や登録手順、銀行印や角印(社判)の用途と特徴について詳しく説明しています。法人印の種類や印鑑登録の方法を理解することで、日本でのビジネス展開がスムーズに進むでしょう。
法人の設立登記の流れについては、こちらをご参照ください。 3.法人の設立登記プロセス
また、銀行口座作成については、こちらをご参照ください。 4.銀行口座開設
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